今回は、インテリアにもなる酒器ということで、【インテリア】ミツワ硝子工芸作の江戸切子、重矢来文様のぐい吞みに引き続き、錫色酒器のご紹介をしたいと思います。
錫食器が注目を集める理由
浄化効果
錫の分子は不純物を吸着し易く、「錫の器に入れた水は腐らない」、「お酒の雑味が抜ける」と言われて、昔から食器として使用されてきました。
錫は錆びない?食器として安全?
よく錫は錆び難くて安全だという謡い文句がありますが、これはミスリードです。
錆び易さを定量的に表現する物性値として、酸化還元電位がありますが、錫の酸化還元電位は-0.136V。
これは鉄の-0.4402Vよりは錆び難く、銅の+0.3419Vよりは錆び易い値です。
因みに錆びない銀は+0.7996、金は+1.50V。
より錆び難い物性値を持つ銅でも錆びるので、錫も当然錆びます。
錫が錆び難いと言われている理由は、「錆びが鉄や銅と異なり透明だから」です。
また、錆びた錫も、純錫と同様に人体に対して与える影響が小さいので、錫は食器として安全とされてきました。
熱伝導率が高くお冷に適している
熱の伝えやすさは熱伝導率という物性値で比較することが出来ます。
一般に金属は熱伝導率が高く、ガラスの1[W/m・k」に比較して、錫は64[W/m・k]と64倍の熱伝導率を持ちます。
これは鉄の67[W/m・k]と同程度で、銅の372[W/m・k]の1/6程度です。
良くカチカチのアイスを体温ですぐ溶かす為に、銅スプーンが使われていることからも、金属の熱伝導率は非常に高いです。
錫は銅の1/6の熱伝導率とはいえ、冷たい飲み物を注ぐと瞬時に食器が同温度になる程度には、熱伝導率が高いようです。
浦中廣太郎さんとは?
和歌山県で生まれ東北芸術工科大学で修士を取得し、現在は秋田公立美術大学で彫金の助手をやられているそうです。
『生活の中の金属工芸』をテーマとし、
KURACCO販売サイトより引用
旅で出会った景色、風習、人等をモチーフにデザインを考え、
使い易く生活の中に馴染むよう日々制作しています。
銅も使った錫色酒器の特徴
錫色酒器の構成
骨格は鍛金技法により一枚の円形の銅板から製作。
内側、外側共に錫引きを行う。
外側は錫を取り除き、銅を硫化することで白と黒の模様をつける。
直径54 × 高さ41(mm)
内容量は70ml
購入したのは4種あるデザインのうち、botayuki(ぼた雪)というモデル
銅の使用で着色が可能に
純錫はシルバー色の1色ですが、錫色酒器は銅の硫化によって白と黒をデザインに取り入れることができています。
錫の効能は純錫酒器そのままに
液体が接する内側は錫なので、酒器としての効能、性能は錫のそれとなります。
最も錫の効能とされる不純物除去機能(塩素等の吸着)は銅にもありますので、銅との違いは錆びが目立たないという1点のみです。
あとは見た目として錫はシルバー色なので、お酒の色を邪魔しません。
銅が骨格なので純錫酒器より薄く軽い
錫は柔らかい金属なので、食器を製作しようとするとどうしても肉厚になってしまい、重くなります。
一方銅はより硬い性質を持ちますので、錫より薄くでき、結果軽くなります。
錫製品の有名なブランド
能作
1916年富山県高岡市にて創業
曲がる「KAGOシリーズ」をはじめ錫100%の製品づくりに拘る。
内側に金箔をはることはあるが、基本的には色付けはしていない。
2022年10月16日「がっちりマンデー!!」にて紹介される。
大阪錫器
1949年、大阪にて創業。
1983年、通商産業大臣より伝統的工芸品『大阪浪華錫器』の指定を受ける。
能作とは異なり、「絵付け」で紋様を描き、「漆塗り」で色をつける製品も存在する。
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